北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2020年06月26日
(308)北九州市育ちの作家 青木潤太朗 新たな“ご当地マンガ”挑戦

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第308回
『西日本新聞』北九州版 2020年6月25日(木)朝刊 19面掲載

北九州市育ちの作家 青木潤太朗
新たな“ご当地マンガ”挑戦
 近年、地域の特色を題材とする「ご当地マンガ」が盛んです。魔夜峰央「翔んで埼玉」を原作とする実写映画の大ヒットも記憶に新しい所。『別冊少年マガジン』(講談社)6・7月合併号から、新たな趣向の作品が登場しました。題して「また来てねシタミさん」(原作・青木潤太朗、漫画・隆原ヒロタ)。
 憂いを帯びた瞳が印象的な美少女が主人公ですが、実は彼女、市井の人々の晴らせぬ恨みを代わって晴らす「殺し屋」なのです。得意技は、現場に自分の痕跡を残さぬよう、その場にありふれたものを利用して依頼を遂行すること。例えば、地元の特産品や名物を…。
 原作の青木潤太朗先生は北九州市育ちの漫画原作者・小説家で、漫画原作は「℃りけい。」(漫画・わだぺん)で2010年にデビュー。高校の部活動を題材に、若戸渡船や筑豊本線など北九州市の風景を織り込んだ「ご当地マンガ」でした。趣味の旅行や釣りでの経験が、新作でも存分に活かされることでしょう。
 依頼を受けたシタミさんは観光地を回り、名物を頬張ります。微笑ましい光景ですが、同時に、依頼遂行に向けての冷徹な計略でもある。やがて機は熟し、可憐な仕事人・シタミさんの大立ち回りが開幕するのです。
 隆原ヒロタ先生のデビュー作「スーパーアルバイター伝説ムラサメ」にも通底する、緊張と緩和の巧みな使い分けとシャープなアクション。シタミさんが背負った数奇な境遇も気になります。次回は7月9日発売の8月号に掲載です!
                         (専門研究員 表智之)
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