ひとことブログ

2020年12月07日
(329)アメリカン・ボーン・チャイニーズ 「ガイマン」で新たな発見

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第329回
『西日本新聞』北九州版 2020年12月3日(木)朝刊 19面掲載

アメリカン・ボーン・チャイニーズ
「ガイマン」で新たな発見

  1年間に出版された海外マンガ(ガイマン)を振り返りながら、まだ知らない面白い作品を読んでみよう!という趣旨から始まった「読もうよガイマン」フェア。北九州市漫画ミュージアムでは、今年もたくさんのガイマンを入手しました!

 その中から今回は、ジーン・ルエン・ヤン著『アメリカン・ボーン・チャイニーズ』(花伝社刊)をご紹介します。本書は著者の自伝的作品で、中華系移民の2世としてアメリカに生まれた少年・ジンの物語です。アメリカ社会の中でアジア系の人々がさらされる何気ない差別や生きづらさ、疎外感の中で、自分のアイデンティティを見つめ、受け入れることで自己を確立していく姿が描かれます。

 物語はジンの学生生活を描く等身大の物語を軸に、中国古典の『西遊記』などの寓話をうまく結びつけながら語られていきます。現実と寓話を行き来する構成、比喩的な表現など、一見難解な物語の中に、様々なメッセージが込められます。注目したのは、作中に登場するキャラクター“チンキー”の存在。黄色い肌、弁髪で、厚かましく空気の読めない言動を繰り返す彼は、アメリカのポピュラーカルチャーの中でステレオタイプ化された“中国人”として象徴的に登場します。このステレオタイプはある意味では完成度が高くて、作者としてはジンを抑圧する悪しき重石として描いたチンキーが、皮肉にもキャラとして人気が出てしまったとのこと(訳者解説より)。相当に根深いものが、読者自身の中にあることを感じさせます。社会状況が異なる日本の読者も、思わずはっとさせられる話ですね。

 本作に限らず、新たな発見の多い「ガイマン」。ぜひ当館でその一端に触れてみてください。

(図書担当・田中千尋)

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