北九州漫画ミュージアム

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2024年02月26日
(478)「ナリキンフットボール」第1巻発売 Jリーグの興奮とともに

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第478回
『西日本新聞』北九州版 2024年2月25日(日)朝刊 18面掲載
「ナリキンフットボール」第1巻発売
Jリーグの興奮とともに

 いよいよ新シーズンが開幕したJリーグ。地元チーム・ギラヴァンツ北九州は昨年同様J3で、松本浩平新監督のもと、新体制での奮闘が始まっています。ほぼ時を同じくして、北九州を舞台にしたプロサッカー漫画「ナリキンフットボール」の第1巻が発売されました。くしくも、シーズン開幕前後に読むのにぴったりな内容になっています。

 本作の主人公・鼓屋我王(つづみや・がおう)は、前シーズンJ1優勝チームの一員。年棒の増額を期待しますが、一見して目立たないプレースタイルを理由に契約解除されてしまいます。彼に限らず、オフシーズンのチームと選手は大きく揺れ動くもの。成績や経営状態に連動し、監督の変更に年俸の増減、契約解除に解雇、移籍と、時には試合以上に波乱万丈です。我王は低迷するJ2チーム「北九州モンキーズ」に移籍。年俸は3千万円から9百万円に激減します。

 とはいえ、ここでくすぶる主人公ではありません。「ナリキン」と名の付く通り、“世界一稼ぐフットボーラー”になることを目指す我王は、チームの頭脳という地位を獲得するべく、類まれなる分析力で的確にアピール。体力やテクニックに飛びぬけた優秀さがなくとも、勝利を狙うことはできると、少しずつチームに示していきます。

 まだ物語はシーズン開幕当初という序盤。これから「北九州モンキーズ」は我王を中心にどう成り上がるのか、目が離せません。そして今後、地域やサポーターとチームの関係性に踏み込んでいく予感も。北九州の姿がさまざまな形で登場する本作に、ぜひご注目ください。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
◆清水海斗・明石英之「ナリキンフットボール」

(講談社『ヤングマガジン』公式サイト)