北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2024年04月17日
(485)わたせせいぞうの軌跡 新たに常設 初期作品から代表作まで

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第485回
『西日本新聞』北九州版 2024年4月14日(日)朝刊 22面掲載
わたせせいぞうの軌跡 新たに常設
初期作品から代表作まで

 「ハートカクテル」や「菜」など、大人のラブストーリーを鮮やかな色彩で描いてきた漫画家・わたせせいぞう先生は、今年画業50周年を迎えます。

 1945年、神戸市に生まれたわたせ先生は、生後間もなく父の実家がある小倉市(現北九州市小倉北区)に疎開。高校卒業までを同地で過ごします。この18年間で経験したことは、のちに漫画家となる彼に大きな影響を与えました。たとえば、両親が経営する洋食店は、当時小倉に駐留していたアメリカ軍の兵士らも利用しており、彼らからもたらされたカラフルなファッションや文化、フルカラーのコミックはわたせ少年に鮮烈な印象を残しました。

 小中学生時代は月刊少年漫画誌や手塚治虫を愛読する熱心な「漫画少年」で、クラスメイトと誰が一番上手にキャラクターを描けるか対決していたとか。高校生になってからは小説に傾倒し、この頃の蓄積が漫画家としてのストーリー作りに活かされたとのちに語っています。

 東京の大学に進学し、卒業後、損害保険会社に就職したわたせ先生は、20代後半で再び漫画の世界に戻ります。ナンセンス漫画という、シンプルな描線とデフォルメされたキャラクターが特徴的な大人向けのコメディ作品を執筆し、デビューを果たすのです。

 北九州市漫画ミュージアムでは、北九州時代のエピソードやサラリーマンと二足のわらじで始まった漫画家生活初期の作品、そして作家としての地位を確立した代表作を紹介する新たな常設展示をこの4月から公開しています。この展示で、北九州を代表する作家の軌跡をたどってみてはいかがでしょうか。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
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