北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2025年10月15日
(561)日本の影響受けた作品発信する雑誌創刊 欧州で育まれるマンガ

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第561回
『西日本新聞』北九州版 2025年10月12日(日)朝刊 14面掲載
日本の影響受けた作品発信する雑誌創刊
欧州で育まれるマンガ

 「マンガは世界に誇る日本文化」―。そう言われるようになったのは割と最近のことです。大人も漫画を読み、大学や美術館でマンガが扱われるようになり、少しずつ地位を高めていったのですが、多くの人にとって「誇れる」ものになったのは、海外でもマンガが読まれ、愛されていると「発見」されたことにも理由があるでしょう。

 アジアではかなり早い段階で親しまれていましたが、欧州でマンガや日本製アニメが広く、熱狂的に支持されるようになったのはおおむね1990年代以降のことです。当初の翻訳版マンガは、横書き文化圏の地域では「左から右」にページを開けるよう、原稿を反転させて製本することがよくありました。次第に読者は日本マンガの読み順や独特なルールに慣れ、近年出版されるものは日本版とほぼ同じ形態になっています。

 このようにマンガが海外で定着していった過程で重要なのが、翻訳やローカライズを手がける現地出版社の存在です。彼らがあらゆるジャンルの作品を紹介することで、マンガ読者が育ち、更には“マンガスタイル”で作品を描く漫画家の誕生につながっていきました。

 今年、ドイツ、フランス・ベルギー、スペイン、イタリアのマンガ出版社4社がタッグを組んで創刊した「MANGA ISSHO」は、日本マンガの表現様式に影響を受けた各国の漫画家たちを集めた画期的な雑誌です。欧州の漫画家が、欧州の読者に向けてマンガスタイルの作品を発信する―。ここに、マンガの広がりの一つの到達点を見ることができるのではないでしょうか。現在、漫画ミュージアムで現物を展示中です。ぜひお手に取ってご覧ください

(学芸員・石井茜)

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