北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2022年10月09日
(410)東京での「矢口高雄展」 北九州とちょっと違う

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第410

『西日本新聞』北九州版 2022年10月2日(日)朝刊 16面掲載

東京での「矢口高雄展」 北九州とちょっと違う

 今年の春に当館で開催した「矢口高雄展 夢を見て 描き続けて」が、東京にある明治大学米沢嘉博記念図書館で巡回開催されることになりました。「釣りキチ三平」で知られる漫画家・矢口高雄氏の原画の大部分は、秋田県の横手市増田まんが美術館が所蔵しており、この展覧会も同館のコレクションを元に作り上げたものです。

 ひとつの展覧会がいくつかの都市で開かれる、いわゆる巡回展はどのような流れで開催されるのか。多くの場合、作品や解説といった展示物、開催に係る許諾権利料や輸送費といった諸経費をひとまとめにし、一つのパッケージになったものを、希望する館がお金を出して招致します。

 実施館としては企画を一から立ち上げる必要がないため省力化できるのか買取巡回展のメリットです。一方で、開催できる期間や展示内容が限定される不自由さがあり、買取にかかる費用も高額です。パッケージの制作には何年もかかり、巡回先や巡回期間も事前に決めておかないと作品を保管する倉庫代や諸経費が無尽蔵に増えていくため、制約があるのも当然なのですが…。

 一方、今回の「矢口展」はいわば「緩やかな巡回展」。収蔵館に都度作品を集荷・返却する必要はあるものの、開催時期や点数、展示構成などに確固とした決まりはなく、開催館の事情や意向を反映しやすくなっています。

 このような巡回展が実現できるのは、漫画原画を収蔵し、その活用に肯定的な施設の存在あってこそ。東京展はタイトルこそ北九州と同じですが、構成は開催館の特性に合わせて変更されています。機会があれば、同じだけどちょっと違う「矢口展」を見に行ってみてくださいね。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
「矢口高雄展 夢を見て 描き続けて」は東京都千代田区神田猿楽町の明治大学米沢嘉博記念図書館で10月14日(金)~2023年2月13日(月)に開催。休館日は火水木曜と年末年始。入場無料。詳細はこちらへ