北九州漫画ミュージアム

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2023年08月15日
(450)鬼灯の冷徹 原画展 繊細な違い、鮮明に

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第450回
『西日本新聞』北九州版 2023年7月30日(日)朝刊 18面掲載
鬼灯の冷徹 原画展 繊細な違い、鮮明に

 北九州市漫画ミュージアムで開催中の「鬼灯の冷徹 原画展 地獄資料館」では、作者・江口夏実先生の原画約190点を展示しています。

 日本のマンガ制作の現場は現在、デジタルツールを使うことが多くなっていますが、江口先生はペンやインク、筆といった道具を使う「アナログ作画」のマンガ家です。

 今回は原画の「色」に注目して作品を紹介しましょう。『鬼灯の冷徹』のカラーイラストには、色鉛筆、カラーマーカー、水彩絵の具といった多彩な画材が用いられています。たとえば肌の表現では、大きな部分はマーカーや水彩を使用し、その上に層を成すように色鉛筆で陰影や質感が足されることも。肌の色合いは毎回全体のバランスや色調を見ながら調整されるそうで、同じキャラクターの肌であっても、作品ごとに使用色や表現が異なります。

 紹介している作品の場合、ちょうちんのきらびやかでどこか温かな光がキャラクターの肌に反射している様子は、いくつもの色を使って複雑に表現されていることが分かりますし、原画だとこのような色や使用画材による繊細な違いを、より鮮明に感じ取ることができます。

 また色でいうと主人公の鬼灯は「黒」の印象が強いキャラクターですが、衣装が黒一色であるのに対し、拷問道具のこん棒は青色が黒の下に潜んでいます。鉄の質感や使用感を出すための表現とのことで、こういった細かな色彩表現に目を凝らすのも、作者の創意工夫が分かって楽しいのではないでしょうか。

 生の原画を鑑賞できるせっかくの機会。ポイントを押さえて、じっくりと味わってみてください。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
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