2025年06月25日
(545)「妖狐×僕SS」展、28日開幕 奥深い世界観 余さず体感
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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第545回
『西日本新聞』北九州版 2025年6月22日(日)朝刊 16面掲載
「妖狐×僕SS」展、28日開幕
奥深い世界観 余さず体感
「妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス)」は、北九州ゆかりの作家である藤原ここあ先生が2009年から14年にかけて連載した作品で、累計550万部以上を記録。テレビアニメ化も経て大ヒットしました。この夏、北九州市漫画ミュージアムでは、本作の世界観を多数の資料や展示物とともに余すことなく体感できる展覧会を開催します。
「妖狐×僕SS」は、妖怪の“先祖返り”たちが集うマンション“妖館”を舞台に繰り広げられるラブコメディーで、主人公の凜々蝶(りりちよ)は「虚勢を張って悪態をついてしまう」ことが悩みの15歳の少女。彼女が試行錯誤しながら、周囲の人々と関係を築いていくさまが繊細に、時にユーモラスに描かれます。
特に、物語のヒーローであり、彼女のシークレットサービスを務める御狐神双熾(みけつかみそうし)との関係はロマンチックで、ふたりの心の交流は見どころの一つ。しかし物語が進むごとに、大きな謎と危険が彼女たちに迫ります。
本作にはどんでん返しと言ってもいいような大きな仕掛けがあり、それが作品の奥深さにも繋がっていますが、その中心にあるのは「自分とは何か、どうあるべきか」という自分自身の心と向き合うことの重要性と、勇気をもって他者と向き合うことの大切さです。そういった点で「妖狐×僕SS」はいつの時代、どの世代にとっても普遍的な物語と言えるでしょう。
魅力的なキャラクターに、ファンタジックな舞台設定、シリアスとコメディが絶妙に織り交ぜられたストーリーで、読者の心を大いにつかんだ「妖狐×僕SS」世界に、ぜひ会場で浸ってください。
(学芸員・石井茜)
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