北九州漫画ミュージアム

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2021年04月30日
(339)諸星大二郎展 異界への扉を開く漫画家

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第339回
『西日本新聞』北九州版 2021年3月4日(木)朝刊 21面掲載

諸星大二郎展 異界への扉を開く漫画家

 日本中に熱狂的なファンをもち、クリエイターから研究者まで絶大な支持を誇る漫画家・諸星大二郎(もろほし・だいじろう)。1970年、雑誌「COM」に投稿した『ジュン子・恐喝』で実質的なデビューを果たし、74年には『生物都市』で集英社の漫画賞「手塚賞」を受賞、注目を集めます。
その作風は実に幅広いジャンルに渡ります。たとえば先の『生物都市』は、宇宙船の帰還をきっかけに、機械と人間が溶け合って一体化するという異常現象が地球に広まっていく…という短編。このようなSF的発想から生まれた作品のほか、民俗学・考古学的な視点を持った作品、日本や海外の神話・伝説を扱ったもの、ホラーやギャグなど様々な要素を盛り込みながら日常をテーマにした作品まで実にさまざま。カケアミ線を重ね合わせることで生まれる、諸星ならではの絵柄とも相まって、どの作品においても独特の世界を築き上げています。
しかし、さまざまな題材から着想を得て描かれた物語は、日常と表裏一体にある「異界」や「怪異」を描いている、という点では共通しています。圧倒的な想像力のもと生み出された異界は、得体のしれない畏怖するべきものであると同時に、好奇心を刺激する永遠に解けない謎として、読者の心をつかんでいます。
本展では、漫画原稿約350点を中心に、作品世界に関わりの深い美術作品や歴史・民俗資料などをあわせて展示。土器やパプアニューギニアの仮面、絵巻が漫画原稿と並ぶという、これまでにない、しかし諸星大二郎だからこそ成立した特異な展覧会で、読む者を「異界」へと導く魅力の原点へと迫ります。

(学芸員・石井茜)

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北九州市漫画ミュージアム「デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉」