ひとことブログ

2021年04月30日
(343)畑中純展 作家の原風景 原画で味わう

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第343回
『西日本新聞』北九州版 2021年4月15日(木)朝刊 21面掲載

畑中純展 作家の原風景 原画で味わう

 当館では、2012年に亡くなった北九州ゆかりの漫画家・版画家である畑中純先生の作品を、ご家族から寄託を受けて収蔵しています。
畑中先生は1950年、北九州市小倉南区(旧小倉市)生まれ。代表作は『まんだら屋の良太』、『玄界遊俠伝 三郎丸』などで、北九州、特に小倉の風土や人間模様を濃密に描いた作品群で知られます。たとえば、『まんだら屋~』では、小倉南区にあるという架空の温泉街を舞台に人間の悲喜こもごもが、『三郎丸』では、戦中から戦後にかけての北九州の混沌としたありようが生々しく描かれています。
畑中先生が長年に及ぶ画業で生み出した膨大な作品の中から、「原風景」をテーマに、漫画原稿や版画扉絵を抜粋した展覧会を開催中です。炭坑や製鉄所の存在が街の中心にあった子供時代。その当時のわんぱくな思い出が投影された作品をはじめ、青年期まで過ごした北九州、後半生を過ごした多摩の、豊かな自然風景が描かれた作品を展示しています。身近なところだと、紫川や足立山などが作中に登場。これらは作者が実際に通い、愛した場所でした。
ここで紹介しているのは、『大多摩月夜』という1996年から98年にかけて発表された漫画の、河童が登場する回の扉絵です。子供の目線から見た山や川の大きさ、美しさ、そして少しの恐ろしさが、ダイナミックでありながら細やかで情感あふれるペンタッチで表現されています。
誰しもが童心に帰るような気分に浸れる世界と、在りし日の北九州と多摩の懐かしい情景。畑中先生が豊かに物語った「原風景」を、ぜひ会場で味わってみませんか。

 

(学芸員・石井茜)