ひとことブログ

2022年03月10日
(380)「水野英子 自作を語る」少女漫画 先駆者の軌跡

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第380回

『西日本新聞』北九州版 2022年3月6日(日)朝刊 14面掲載

「水野英子 自作を語る」

少女漫画 先駆者の軌跡

 少女マンガのパイオニアの一人、水野英子先生(1939年生まれ)の画業をたどる『総特集 水野英子 自作を語る』が先月刊行されました。水野先生は下関市の出身で、隣同士の縁も何かと深く、北九州市漫画ミュージアムでは「北九州ゆかり漫画家」として、折に触れ、紹介に努めています。

 55年に雑誌『少女クラブ』のカットイラストでデビューし、56年にはマンガ「赤っ毛小馬(ポニー)」を同誌で発表。大胆な画面構成や、強い意志で運命を切り開く新たなヒロイン像などで読者を魅了し、少女マンガの世界を確立する先駆者となりました。『総特集』では7万字を超えるインタビューを軸に、先生自身の言葉と豊富な図版でその挑戦の軌跡を丹念に追っていきます。

 58年に下関から上京した水野先生が入居したのは、大勢の若手マンガ家が集った「トキワ荘」。一昨年には「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」として復元公開されています。7カ月ほどの短い居住期間の間に、赤塚不二夫・石ノ森章太郎と「U・マイア(ゆーまいあ)」名義での合作を経験。上京以前に下関で仕上げた「赤い火と黒かみ」を含め3作を発表し、気鋭の先輩2人から薫陶を受けました。

 その後も、「星のたてごと」「白いトロイカ」「ファイヤー!」「ルートヴィヒⅡ世」と、マンガの新たな可能性を常に見据え、斬新な意欲作を世に問い続けていきます。その挑戦を支えた編集者たちや、偉大な先人・手塚治虫をはじめとするマンガ家たちとの交流、そして水野先生自身の熱い思いに、この機会にぜひ触れてください。

(学芸研究員 柴田沙良)