ひとことブログ

2022年03月01日
(379)矢口高雄の世界 自然とふるさと描き続けて

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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第379回

『西日本新聞』北九州版 2022年2月27日(日)朝刊 18面掲載

矢口高雄の世界 自然とふるさと描き続けて

 『釣りキチ三平』『マタギ』『おらが村』などの作品で知られるマンガ家・矢口高雄。北九州市漫画ミュージアムでは、日本の情景を愛し、ふるさとを描き続けた作家の画業を、膨大な原画とともに振り返る回顧展を開催します。
1939年、秋田県の雪深い農村に生まれた矢口少年は、手塚治虫作品に衝撃を受け、「マンガ家になる」という夢を抱きます。しかし、それはあくまで淡い夢として、高校卒業後は地元銀行に就職。一時はマンガを描くことから離れたものの、白土三平の『カムイ伝』に出会ったことで発奮し、作品制作を再開しました。その後、白土の作品が看板であった雑誌「月刊漫画ガロ」に投稿した『長持唄考』(69年)が評価されたことを契機に、プロの道を歩み始めます。

 銀行員からの転身、30歳を超えてからの作家活動と、異色の経歴を持つ矢口の名を一躍有名にしたのが、73年に発表した『幻の怪蛇 バチヘビ』と『釣りキチ三平』です。自身の経験や育った地域を題材に、大いなる自然と野性をダイナミックかつ緻密に描いたこれらの作品は大ヒット。ツチノコブームや釣りブームを巻き起こし、社会的な影響力をも持つ優れた作家として高く評価されていくのです。

 2020年に惜しくもこの世を去った矢口高雄。その50年に渡る偉業は、ふるさとの情景と思い出なくしては成されないものでした。全国に先駆けてマンガ原画の収蔵・展示に力を入れた、郷里の美術館「横手市増田まんが美術館」の設立にも尽力し、名誉館長も務めました。ふるさとを愛し、マンガを愛し、描き続けた作家の迫力の手仕事を会場でぜひご覧ください。

(学芸員 石井茜)

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