北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2022年07月02日
(396)「ちはやふる」の世界 若者の思い伝える和歌

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第396回

『西日本新聞』北九州版 2022年6月26日(日)朝刊 16面掲載

「ちはやふる」の世界 若者の思い伝える和歌

 末次由紀先生の人気少女漫画「ちはやふる」は、競技かるたをテーマに、切磋琢磨しながら成長する若者の青春を熱く描いた作品です。北九州市漫画ミュージアムでは、多数の漫画原稿や読者への思いのこもった末次先生のインタビューなどから、「ちはやふる」の世界をじっくりとたどる展覧会を開催しています。

 競技かるたに使用されている小倉百人一首は、藤原定家が当時一般的だった室内装飾に用いるために、頼まれて選んだといわれています。春夏秋冬、自然を読んだ歌、恋に関する歌など、さまざまなテーマで詠んだ歌人100人分の和歌を1人1首ずつ収めました。 

 定家と同時代の歌だけでなく、古来編さんされてきた複数の和歌集からとられました。例えば友人との出会いと切ない別れを、紫式部は「めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな」と詠みました。「ちはやふる」では百人一首の読み手や和歌が、主人公たちの思いを伝え合うかのように時に幻想的に登場します。

 末次先生は連載の途中でデジタル作画へ移行したということですが、どのコマ、どのページも線の方向や強弱などメリハリをつけた、どっしりとした描線で構成されていることに変わりありません。また、かるたの試合におけるすさまじいスピードで札をはらう選手たちの俊敏さ、正確な手指の動き、端正な体の構えなどダイナミックな試合場面も見逃せません。7月発売の単行本49巻カバー、連載雑誌「BE・LOVE」の表紙など、華やかなカラーイラストの数々も、ぜひ「ちはやふる展」の会場でご覧ください。

 

(学芸研究員  柴田沙良)

 

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「ちはやふる展」公式サイト