北九州漫画ミュージアム

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2023年07月06日
(445)鬼灯の冷徹原画展 楽しい地獄へようこそ

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第445回
『西日本新聞』北九州版 2023年6月25日(日)朝刊 16面掲載
鬼灯の冷徹原画展 楽しい地獄へようこそ

 皆さんは「地獄」にどんなイメージを持っていますか?

 閻魔大王の憤怒の形相や、鬼たちによる苛烈な刑罰を思い浮かべて、恐ろしさや、不気味さを感じる方が多いかもしれません。しかし、大王は裁判官、鬼は刑吏として、それぞれ業務を全うしているだけの社会人…と見方を変えてみるとどうでしょう。

 北九州市漫画ミュージアムでは、7月1日から企画展「鬼灯の冷徹 原画展 地獄資料館」を開催します。『鬼灯の冷徹』は漫画雑誌「モーニング」で2011年から20年まで連載された作品で、2度のアニメ化も経て絶大な人気を獲得しました。

 地獄に生きる人々のお仕事模様や日常を、コメディータッチで描く本作。その面白さのひとつに、地獄を現実的な社会として表現した点があります。
 例えば、あまたの裁判を担当する閻魔大王は、「重責を負う心労の絶えないボス」。主人公・鬼灯の役職でもある補佐官は、「ボスをサポートする多忙な中間管理職」。そして刑を執行する鬼たちは「労働の辛さも楽しさも享受する一般社員」であるかのように描かれ、『鬼灯の冷徹』における地獄は、まさに会社組織のようです。拷問場から一歩出れば街があり、家々があり、普通の生活や娯楽があるという、現世と地続きの何だか楽しげな「地獄」は、読者に親近感を与えます。
 個性豊かなキャラクターが織り成すユーモアたっぷりでテンポの良い物語。そしてさまざまな仏教説話や神話、伝説や歴史を現代風に解釈した内容で、好奇心も満たしてくれる『鬼灯の冷徹』。本展でその魅力を深く味わってみてはいかがでしょうか。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
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