北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2023年08月06日
(439)北九州ゆかりの漫画家・西山進 描き続けた長崎での被爆

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第439回

『西日本新聞』北九州版 2023年5月14日(日)朝刊 22面掲載

北九州ゆかりの漫画家・西山進
描き続けた長崎での被爆

 漫画家の西山進さんは、長崎での被爆体験を描き、伝えてきたことで知られています。お生まれは1928年で、幼少期は八幡市(現・北九州市)や大分県の宇佐で育ちました。42年に高等小学校を卒業後、三菱長崎造船所で働くため、長崎に。そして45年8月9日、勤務中にアメリカ軍が投下した原子爆弾の被害を受けました。

 戦時下の抑圧された暮らしぶりや、原爆の閃光(せんこう)と衝撃、そして、救援活動に従事する中で触れた、あまたの痛ましい惨状を繰り返し描いてこられました。北九州市漫画ミュージアムでも、絵本『あの日のこと~ぼくの消えない記憶 一九四五・八・九~』(2005年、クリエイティブ21)をご覧いただけます。

 西山さんは昨年10月6日に94歳で逝去されたのですが、それに先立つ8月、漫画『おり鶴さん 漫画で描きつづけた被爆者の戦後』が、福岡の出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」から刊行されました。広島・長崎の原爆被害者が結成した「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」が発行する月刊の機関紙に、1979年から40年以上連載した作品をまとめたものです。

 被団協が政府に求め、社会に訴えてきた被爆者援護の充実や核兵器廃絶への願いを、折々の時事にからめて描き続
けています。作品の背景となる出来事には注釈が入れられ、歴史読み物としても読めるのですが、核兵器廃絶への切々たる願いが何より胸を打ちます。当館の閲覧ゾーンには他に最晩年の作となる絵本『忘れないで 長崎原爆とさくらこちゃん』(文・竹下ふみ、2022年)を配架。今後も顕彰に努めて参ります。

(学芸担当係長 表智之)

=LINK=
西山進『おり鶴さん 漫画で描きつづけた被爆者の戦後』(書肆侃侃房、2022年)