北九州漫画ミュージアム

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2024年01月24日
(473)『大乙嫁語り展』作者の言葉で作品を知る

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第473回
『西日本新聞』北九州版 2024年1月21日(日)朝刊 18面掲載
『大乙嫁語り展』
作者の言葉で作品を知る

 早いもので会期が残り1週間となった『北九州国際漫画祭2023 大乙嫁語り展』。開幕日に開催したイベントでは、「乙嫁語り」の作者・森薫先生に創作の裏側についてたっぷりとお話しいただきました。

 そのうちの一つをご紹介しましょう。ビクトリア朝時代のイギリスにおけるメイドを歴史考証に忠実に描いた「エマ」で高い評価を得た森先生が、満を持して2008年に連載開始した漫画「乙嫁語り」。19世紀半ばの中央アジア一帯を舞台にした本作は、前作同様「異国歴史ロマン」とカテゴライズできますが、資料集めにはひときわ苦労があったとか。

 豊富とは言えない日本語文献、記録写真の少なさ…。さまざまな言語の資料にあたりながら、自身で翻訳したり、欠落している部分を想像したり、現代に残っている文化と比較したり、その創意工夫の繰り返しで物語や作品世界を彩る風俗・風景を作り上げているそうです。

 イベントに参加できなかった方には、会場でのお楽しみがあります。実は本展では、こうした創作背景や、作画上のこだわり、キャラクターへの思いなど、森先生自身の言葉が膨大に展示されているのです。

 このような原画展では、もちろん生の筆致を感じ取れる原画にご注目いただきたいですが、作者の言葉と並べて見ることで新たな気付きを得られ、また一人の漫画家が生み出す創作のすごみを感じ取ることができるでしょう。そのインパクトは、作品を知っているかどうかにかかわらず大きいはず。『大乙嫁語り展』は、稀有な漫画家の歩み、その軌跡を体感できる機会ともいえます。皆さんのご来場をお待ちしています。

(学芸員 石井茜)

=MEMO=
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