北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2025年09月14日
(553)妖狐×僕SS展、31日まで 音楽とともに作品を体感

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第553回
『西日本新聞』北九州版 2025年8月17日(日)朝刊 18面掲載
妖狐×僕SS展、31日まで
音楽とともに作品を体感

 現在、各地で開催されている「漫画展」。その醍醐味は、普段と違った形で漫画に向き合う体験にあるといえます。漫画は「読むためもの」ですから、ストーリーを追って次々にページをめくってしまうのが普通ですが、一枚ずつ展示されることで、ひとつひとつのこまや印象的なシーンをじっくりと味わえます。また、原稿の筆致や色彩の表現に注目して、絵画のように鑑賞することもできるでしょう。

 漫画展の中でも近年増加しているのが、「体感型」の展示です。原稿をただ見せるだけではなく、キャラクターや物語の舞台を立体化したり、会場をイメージに合うカラーで装飾したり、はたまた映像や音楽を使って雰囲気を演出したり…。作品世界に没入してもらうための仕掛けがあまたにちりばめられたものをそのように表します。

 現在開催中の「妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス)・藤原ここあ展」もその一つで、会場にはキャラクターの立体造形物や、物語の中で重要なシーンを再現したコーナーがあり、劇的なクライマックスシーンを動画にして上映しています。なんといっても本展で特徴的なのは、どのエリアでも、感情を揺さぶる音楽が流れている点でしょう。時系列に展示された漫画原稿を目で見て物語に浸り、その感動に寄り添った音楽を耳で聞くことで、より「いぬぼく」の作品世界に入り込める仕組みで、これぞまさに「体感型展示」といえるでしょう。

 本展の会期も残り2週間。ぜひ会場で漫画の世界を「見て聞いて」楽しんでみてください。

(学芸員・石井茜)