北九州漫画ミュージアム

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2021年06月10日
(346)「医療マンガ」生誕50年 初のガイド本100作品紹介

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第346回

『西日本新聞』北九州版 2021年5月20日(木)朝刊 21面掲載

「医療マンガ」生誕50年 初のガイド本100作品紹介

 新型コロナウイルスの感染が広がった2020年、日本の医療マンガは生誕50周年を迎えました。

 「医療マンガ」とは医師を主人公としたり、医療現場を舞台とするものなど、主に「医療」をテーマとしている作品を指します。その起源となるのは、1970年に「ビッグコミック」(小学館)にて連載が始まった手塚治虫の『きりひと賛歌』と言われています。

 「医療マンガ」と一口に言っても、取り扱われる職種や疾患・症例などは多様化しています。また患者や家族視点の「エッセイマンガ」も増え、治療だけにとどまらない、人が生きていくための様々なテーマが描かれるようになりました。

 近年、医療をめぐる状況に関して、医療従事者と患者間の円滑なコミュニケーションを目指す概念として2007年にイギリスで提唱された「グラフィック・メディスン」が注目されています。見落とされがちな病をめぐる個別の経験や苦しみ等に目を向けることの大切さが提唱され、海外の医学生教育の現場では、患者一人ひとりに寄り添い合うための教育手法としてマンガが活用されています。

 今年4月、医療分野でのマンガ・コミック表現の活用を考えるグラフィック・メディスン協会は『日本の医療マンガ50年史』(さいかす)を刊行しました。有名作品から隠れた名作にいたるまで100作品のレビューやコラム等が掲載された日本の医療マンガに関する初めてのガイドブックで、当館のスタッフも執筆しています。

 コロナ禍において「医療」について関心を持った方も多いのではないでしょうか。ぜひこの機会に身近な医療について考えるきっかけとして、「医療マンガ」をご覧ください!

(図書担当・原田佳織)

=LINK=

日本の医療マンガ50年史(一般社団法人 日本グラフィック・メディスン協会)