ひとことブログ

2021年09月12日
(358)一条ゆかり展 「クイーン」の軌跡たどる

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第358回

『西日本新聞』北九州版 2021年9月9日(木)朝刊 17面掲載

一条ゆかり展 「クイーン」の軌跡たどる

 1968年に雑誌『りぼん』でデビューし、集英社の少女誌、女性誌を中心に約50年にわたる画業を誇る漫画家・一条ゆかり。発表する作品は絶大な人気を博し、多数のタイトルがメディアミックス展開され、年代や性別を問わず愛される、まさに「少女漫画のクイーン」と呼ぶにふさわしい存在です。18日から北九州市漫画ミュージアムで開催する展覧会では、最初期の作品から「有閑倶楽部」(81~2002年)をはじめとする代表作を中心に、作家の軌跡を渾身の肉筆原画でたどります。

 一条作品の特徴を一言で表すなら、「ドラマチック」だと言えるでしょう。初期の代表作「デザイナー」(1974年)や「砂の城」(77~78年)では、主人公は狂おしいほどに愛を求め、その激情は物語を波乱に満ちたものにしています。誰かを愛し、愛されたいという人間の根源的な欲求を、葛藤を含め、あますところなく描く作風は、読者の心を強くつかみます。

 加えて、登場人物の生々しい人間臭さがドラマを奥深いものにしています。美しく才能にあふれていても、弱さや欠点、ゆがみがあり、善性と悪性も併せ持つキャラクターたち。たばこや酒に親しむ、享楽的な雰囲気を持つ人物の登場は不良的でもあり、他作品とは一線を画す「大人の世界」がありました。90年頃からは成人女性向け雑誌に活躍の場を移し、「大人の女の世界」をさらに濃密に描いて「プライド」(2003~10年)という傑作も生み出しました。

 一条ゆかりが切り開いた世界、そして華麗な原画の数々を、ぜひ会場でお楽しみください。

(学芸員 石井茜)